人が神樣になることが道通することである．「兄弟を自分の體のように，兄弟の罪を自分の罪に，兄弟の事情を自分の事情に思え」 というのは道 (どう) に到る正確な話なのである．この話を實踐して自分の中で成し遂げられた時, その人は義人になったものであり，道 (どう ) を通じたことになる．誰でも憎い人，氣にくわない人が一人も無くなった時, その人は義人になったのであり, 道通したのである．

  罪があれば氣だるく，苦しみを伴うことが必然なのである．罪の値は苦である．罪人が樂な生活をしようと思うそれ自體が誤ったものであることを私はかつて氣付いていた．だから私は生涯樂な生活はしなかった．罪の値で苦しみに遭うことは當たり前のものであると何時も考えた．

  そして暇さえあれば重勞動をし，苦しみを自ら招いた．禮拜する時も樂な姿勢で座って禮拜したことは一度もなかった．常に膝をついて座ったので膝にタコが出來ている．人の家を訪れる時も常に膝をついて座ったので，そこの家人から 「もっとお樂にお座りなさいませ」 と言われたものである．

  そんなにも膝をついて生活をしたので膝をついて座る方がむしろ樂な姿勢と思うようになってしまった.罪の値によって苦しみに遭うことは當然と思ったので，かえって樂な姿勢が堪えられなかったのである．何時も苦しみに遭い，痛みに遭うことが當然と考えたのである．

  ◇ 罪惡の假面を完全に脫いでしまうには

  勝利祭壇に參席される皆さんは，罪惡の假面を完全に脫いでしまおうと每日禮拜をしている．罪惡の假面を完全に脫いでしまうには，苦しみの過程を經なければならない．苦しみの過程を經なければその罪惡の假面を脫ぐことは出來ないのである．ここ勝利祭壇は佛敎式で話うならば苦行する場所である．佛敎がある程度は道通の道に近い論理を持っているが，そのポイントを正確に知っては居ない．

  だから，佛敎徒は勝利祭壇に來れば先頭に立って動くのである．ここ勝利祭壇は苦行する場所である．ここで皆さんに每日のように敎えている 「誰をも自分の　のように思いなさい」 という言葉はすぐには實踐出來ない言葉である．實踐出來ないことを出來るようにここで訓練をさせているのである．出來ないことを出來る樣にさせようとするから心も體も苦しいのである．  

  ここは聖人を作る場所である．故に話を聞いて良いと考えろと言うものではなく，耳を樂しませることを目的としているのでもない．六千年の人類歷史以來, 初めて私は道通し，義人に生まれ變わったモデルなのである．それ故に，私が步んで來た足跡を皆さんも步まねばならないのである．私が步んで來た足跡はあまりにも險しく堪え拔くことが出來ないほど大變な淚の生涯であった．

  道を步く時も淚を流さなくてはならず，寢床に就いても淚を流した．自分自身を取り卷く生活の中で苦行を貫き通して持續し，實踐してこそ兄弟を自分の體と思い，兄弟の事情を自分の事情と思う生活は，犧牲の道を行く生活であり，犧牲の道をたどることは自分自身を取り除く生活なのである．

  私は，自分を取り除く生活を貫くことは，初めのうちは苦しくてよく出來なかったが，生涯自分を取り除くことに勤め淚ぐんで暮す生活を續けた．家にあっては家族の爲に犧牲の供物にならねばならず，職場にあっては職場で，社會にあっては完全に自分自身を殺す犧牲の供物になる生活を貫き通さねばならなかった．

  こうした犧牲の生活は良心的な生活なのである．良心的な生活を續けることによって良心は次第に强くなったのである．そうして良心が完全に自分の主體靈と變わり，遂には神樣になって，今日ここで人類に永生をぁたえることが出來る能力を授かっているのである．

  ◇ 苦行する生活と言うのは

  苦行する生活とは，體を鍛練させることも倂せて 「私」 と言う主體靈を完全に踏みにじることである．私はこうした自分を踏みにじる生活の中で 「勝利者」 となったのである．だから，眠ければ寢なかった．それは人間としてはあまりにも過酷な事だった．最初は, 眠い時には寢まいと棘あるもので額を，あるいは太股を刺したものである．

  棘を刺しても出來ない時は針で刺すなど樣ざまな方法を試みた．寒い冬，氷を破り冷たいその水の中に飛びこんだりもした．“お前は死んでも良いから死ぬなら死ね”と言う心で自分を踏みにじった．このように，突然一朝にして私が, “勝利者” になったのではない．私は，皆さんが若い時から恩惠生活をするのが良いと話して來た．年取った人たちがあまり急に無理をすれば肉體に大きな負擔がかかるからである．

  私は本當に若くして鍛練を受け始め，それによって自分自身との鬪爭を始めた．十九歲，二十歲の頃から雜念が浮かばないように心を碎いた．雜念が入って來ればセメントの壁に頭をうち付けて衝擊の爲に氣絶をして倒れ，幾時間か後に覺めた時もあった．

  普通の人は出來ない死の境地での鬪爭を自分自身に於てなした．決死的に神樣にすがりつき，神樣に完全に委ねたので，神樣が死境をさまよう中でも守り續け育てられたのであった．そうして，結局，神樣が 「勝利者」 となられたのである．

  ここは，自分を踏みにじって自分を取り除き，人の中身を完全に新しく作って聖靈に生まれ變わる過程を步む所である．私が六千年間，蟬の幼蟲の役をしていたのである．

  それで，その蟬の幼蟲が6千年ぶりに蟬になったのである．私は今，ここに座っていて，億萬分の1秒の間に宇宙のどこへでも出たり入ったりすることが出來る．普通の人の能力では，このような目覺しい事はなし得ない．從って，完全な神に到達するまで言葉に盡くせない鍛練に鍛練を繰り返した．私が先程話をした膝をついて座ることは祭壇に來た時だけしたのではない．

  小さい部屋に入って膝をついて座り，祈り續けた．そうして自分自身を踏みにじることに努めて集中して過ごした．そして，それは，神樣に完全に委ねてこそ可能であった．難行苦行の果ては30日を目瞬き一つせず，水の一口も飮まずに祈った事もある．このように完全に自分を意識することなく，完全に神樣に委ね續け，神樣だけを意識した．

  それは一度や二度ではなく，尖った砂利の上で, あるいは氷の上で，最後はガラス甁を割った破片の上に座って斷食の祈禱をした．10日間の斷食祈禱は生涯ご飯を食べるように頻繁に行なったし，30日間の斷食祈禱は14回行なった．ガラス甁を割った破片の上で素肌の膝をつく時の心地は常に死を覺悟していた．最初はガラスが筋肉を切り裂いて入りこみ, 血がタラタラ流れ，體重が加わったガラスが骨の中まで掘り，あまりの流血にめまいを起こし意識も朦朧とした．

  もし，その瞬間自分を意識すれば，卽ち，自分の命を心配する氣持ちが一瞬でも入れば死んでしまうのである．けれど，自分の生命と全てを完全に神樣に委ねていたので神樣だけを高度に慕い仰ぎ見た．そして微動だにしなかった傷口の血が凝固して止まった．そういう狀態でわずかでも動けば途中から再び血が流れて死んだかも知れない．しかし，30日間を一度も一瞬の微動だにすることが無かったので生きたのである．

  ◇ 心が動けば體も動く

  心が動けば體もついて動くのである．先に心が動き其によって體が動くことになる．私は神樣に集中していたのでその心が動かなかった．それによって死の境地に勝つことが出來た．30日間を濟ませた後，後ろに倒れながら骨の中まで刺さったガラスの破片を一つ一つ拔き取り絆創膏を貼った．

  今でも膝から下は傷跡がたくさん殘っている. いつであったか, その傷だらけの膝，脛を聖徒たちに見せたことがある．だが，これほどの鍛練を通しても 「勝利者」 になれなかった．そして，遂に密室という所に引き渡され，そこで完全に世の中と緣を切り，過去の全てのことを取り除く鍛練を受けた.*

飜譯:尹金玉 勝師
藤田多惠子 勝師 監修