自尊心が强ければ强い程

  それだけ心は重い

  自我意識は，全ての苦痛と鬪爭を引起す元兇であり，この事は自分になぞらえて考えれば，解る事である．この樣に人は苦痛の中で生き，詳細なことも複雜にし不安を覺える．その原因こそ「私という意識」の爲である．「私という意識」が高ければ自尊心が生じる．自尊心に觸れて滿足すれば高慢な心が起り，傷つければ血氣，怒氣にはやり，口汚く罵ったり，暴力に走ることさえある．

  自尊心を認めてやらねばこれまた不滿の心がおこり，機嫌が惡くなる．故に自尊心に觸れて惡が生じるならば，自尊心そのものが惡である．體內を巡る血は心の動く通り變化し，考えが穩やかならば血も淸く靜まっているが，自尊心があれこれ赴けば心の動く通り血は惡性の血と變わり血液を汚していく．

  濁った血は，さらに素早く惡に反應しやすく，自尊心によって起こるひねくれた心は，心作用自體の慣性により固定觀念の樣に固まり，次回，更にその次ともはや元に回復出來ない程度にまで疲弊する．疾病，苦痛，老い，そして死が生ずるのである．「私という意識」からすべての爭いも競爭も生じているが個人の自尊心は個人の苦痛を生み，集團的自尊心は集團的鬪爭を生み，戰爭やテロも起こる．

  人は本能的に分裂をいやがりながら自我意識に從い，自他の區別を主張し，自他の物を比較しつつ各自が壁をつくり，自身がつくった地獄へふかく入りこむことになる．「私」という「エゴ」の現象は大變狹く息苦しい獄なので，人間をして相通じて見ようとしても通じ得ないし，逢うに逢えず，いわゆる人間疎外の無期囚に轉落させるのである．

  「あなた」 「私」の區別を無くすこと

  「私という意識」? これこそ人を苦しめ，離反せしめ，最後は人類全體を死と破滅に連れていく元兇であり，六千年間神の心を破壞して立ち，人の心を分立させ，相爭わせながら死へ招いていった惡の元であることを，一體, 誰が知り得たであるうか．

  「私という意識」は決して弱よわしい存在でなく，人の心の最高の位置にいて，今もその心を操縱している怨讐の中の怨讐である．現在，この今も，秒びょに人の心をすっぽり捕えて動いている恐ろしい存在である．それ故, 「私という意識」の獄を破壞し，本來の美しさと喜びに滿ちた故鄕を回復するため，我等なすべきことは何か．

  「私という意識」に勝ち，本來の人に回復する爲に努力が必要であろう．心ある所には湧き立つ道がある．罪と欲と自我意識とが血の中にあるなら人間の故鄕である根源の生命神もまた，血の中に存在する．ならば先ず，罪と欲と自我意識の通う通路を斷とう．

  「私」という存在は決して特別な存在ではない．「あなた」と「わたし」の區別の無い，全での人を私の體であると考える事である．我われは元來同じ神であり，同じ血統であった．だから他人の事情は私の事情と考えられれるし，他人の罪も私の罪と考えることが出來るのである．「あなた」と「わたし」の區別の無くなった日, ばらばらに分けられた六十億の人生は再び一つとなって互いに出會うのである．

  六千年間隔たった離散家族が一つの所に出會うわけである．この話は單なる言語だけの理論でなく，假設でもない．人の體が永遠不滅に生きるこの說に從う徵標をここに見せて居るのである． 心が變化する時，血もまた變化して「わたしという意識」が去る時，體の汚れも除去出來るのである．

  ここに主張される法を遵守する時, 便尿に, また，汗などの排出物に眞黑い血が出るのはその爲である.「わたしという意識」が除去される時その體は變わる．體が浮くように輕く，全身から香りを放つ．そしてもはや，死ぬことの出來ない永生體に化するのである.*

飜譯:尹金玉 勝師
藤田多惠子 勝師 監修